こんにちは。
大阪府堺市の行政書士の中村です。
ご訪問いただきまして、ありがとうございます。
弊事務所では、就労継続支援A型・B型事業所、障がい者グループホーム、放課後等デイサービスなどの指定申請のご支援をしておりますが、物件の契約をされてから、弊事務所へご依頼のお問い合わせをいただく場合がよくあります。
ただ、事業者指定を受けるための物件の条件を確認されてから契約されているのであればよいのですが、お話をお伺いしてみると、きちんと確認されていないケースが見受けられます。
なかなか条件に合う物件が見つからない中、やっとの思いで見つかった物件ですので少しでも早く契約したいお気持ちは分かりますが、上記のような障がい福祉サービスの施設として使用するためには、障害者総合支援法上の要件だけではなく、建築基準法、都市計画法、消防法などの関係法令の要件をも満たしていなければなりません。
これらの要件を契約の時点で満たせていなければ、工事費用が余分にかかったり、事業者指定を受けることができない場合もあります。
ですので、契約前に、申請先の担当者に事前相談をしてください。
そこで、本日は、物件を契約する前に確認すべきポイントについてお伝えさせていただきます。
弊事務所へご依頼をいただいた場合も、基本的には下記のポイントを確認した上で、平面図、現況写真、その他物件の資料を持参して、指定権者の担当者に事前相談をしています。
目次
都市計画法上の確認事項
□物件の所在地の用途地域を確認→市街化区域内(用途地域)なのか市街化調整区域内なのかについて、自治体の都市計画課又はインターネット上で確認します。
→市街化調整区域内の建物の場合は、都市計画法上の用途変更の手続き等が必要となる場合がありますので避けた方が無難です。
□都市計画法上の手続きの有無の確認
→市街化区域の場合は、自治体の都市計画課等で確認できます。
建築基準法上の確認事項
□建物の延べ面積が200㎡以下の物件であるかどうか→200㎡を超える場合は建築基準法上の用途変更が必要となりますので、なるべく200㎡以下の物件を探しましょう。
□建築確認及び完了検査を受けてているかどうか
→少なくとも「建築確認」を受けていることが必要となります。
→「建築確認」も受けていない場合は、建築士さんからの証明が必要となりますが、費用がかかりますのでお勧めいたしません。
□建築基準法上の必要な手続きの有無を確認
→特定行政庁(大阪市、堺市、岸和田市、和泉市等)以外については、大阪府建築指導室審査指導課で確認できます。
□既存戸建て住宅を活用する場合のチェックリストの内容の確認(グループホームの場合)
→チェックリストの内容を満たせていなければ、建築基準法上「一般住宅」ではなく「寄宿舎」として取り扱われることとなり、多大な改修費用が必要となる場合があります。
→大阪府の該当ページについてはこちら
都市計画法及び建築基準法上の手続きについて詳しくは、建築士さんにご確認ください。
消防法上の確認事項
□所在地を管轄する消防署予防課へ必要な設備について確認→事業所の規模(階数、面積等)、利用者数などにより必要な設備が変わります。
→収容人員が一定の人数以上となる場合は、「防火管理者」の選任と「消防計画」の作成も必要となります。
→テナントビルの一室を賃貸する場合、ビル全体に対して、厳しい基準による消防設備を設置しなければならない場合があります。
□消防設備の設置の可否について所有者さんに確認
→テナントビルの一室を借りる場合で、建物全体に消防設備の設置が必要な場合は、費用負担についても確認してください。
消防設備の設置工事については「消防設備士」しかできませんので、消防設備士の確保も重要です。
立地についての確認事項
□設置しようとする施設により利用者を集めやすいエリアかどうか□近隣住民や自治会長さん等からの理解を得られるかどうか
→事業者指定の要件ではありませんが、障がいのある方に対する偏見もありますので、きちんと住民説明会又は近隣の方への挨拶を行うべきです(この点は事前協議の際に担当者さんから確認されることが多いです)。
□従業員や送迎者などの駐車スペースを確保できるかどうか
→近隣住民の方々の迷惑にならないよう駐車スペースの確保が必要です。
□洪水浸水想定区域や土砂災害計画区域に該当しないかどうか
→該当する場合、「避難確保計画」を作成し、「避難訓練」を実施しなければなりません。
物件内部(設備)についての確認事項
□指定基準に定められている設備が配置可能かどうか→面積基準がある設備(就労継続支援B型事業の訓練作業室や放課後等デイサービスの指導訓練室など)については、当該面積の確保、利用者さんの導線などを意識して充分な通路を確保できるかなどを考慮して施設の間取り等を考える。
→費用を抑えるため、なるべく手をかけずに事業開始したいという気持ちも分かりますが、障がいのある方が利用される施設ですので、施設の間取りや設置が必要な設備について事前に指定権者の担当者と十分に協議するようにしてください。
□採光・換気が確保できるかどうか
→大阪市以外では指定の要件とまではされていませんが、利用者の保健衛生の観点から十分に配慮されていることが望ましいです。
→大阪市の換気・採光の基準についてはこちら
賃貸借契約にあたっての確認事項
これは、物件を契約することが決めってからのこととなりますが、□使用用途について
→障がい福祉サービス事業で使用できることを明確にしておく必要があります。
□契約期間について
→契約期間が満了する前に双方異議がなければ「自動更新」できる内容にしておくこと。
□契約の時期について
→所有者さんのご意向もあるかと思いますが、できれば、契約は事前協議が終えてからとしてもらってください。
□家賃について
→物件を契約してから事業開始までに時間がかかる場合もありますので、家賃の発生日についてもなるべく遅らせられるよう交渉してみてください。
→事業開始後の収支計画をしっかり立てて、設定家賃で採算が合うのかどうかを確認してください。
さいごに
条件に合う物件があればよいのですが、前の施設が廃業するタイミングとピッタリ合わない限りはそのような物件に出会える機会はなかなかありません。同じように開業を考えられていて物件を探されている方も多くいる中、多少の妥協は必要だと思いますが、工事費等の初期費用が過分にかかる場合もありますので、運転資金と併せて十分な資金計画を立てておかなくてはなりません。
事業所の物件探しは、今後の事業運営に大きな影響を与えるものですので、物件調査は慎重に行った上で、契約を行うようにしてください。
大阪市・堺市・南大阪で障がい福祉サービスの開業をご検討の方へ
障がい者福祉サービス施設の開業にあたっては、事業計画の策定、物件の選定、人員の確保、運営に必要なものの手配等、多くの作業が発生します。指定申請に必要な書類も多く、なかなか手続き前に進まない事業所様も多くいらっしゃるようです。
また、運営にあたっては、障害者総合支援法や厚生労働省からの解釈通知の趣旨や内容を正確に理解しておく必要があります。
幣事務所では、グループホーム・就労継続支援事業所・放課後等デイサービス等の開業希望の事業所様のための開業・運営のサポートを行っております。
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